韓国映画『名もなき野良犬の輪舞』に隠された本当のテーマとは

この記事の著者

韓国出身のKPOP・韓国芸能専門フリーライター。慶応義塾大学卒業。

日本にて韓国ドラマや映画の翻訳及び輸入事業をサポート。広告代理店勤務を経て、2012年から韓国Mnetにて、M COUNTDONWやMAMAなどのPRやマーケティングに関わる。

現在は同社退職後、フリーライターとして、幅広い形で日韓文化交流にかかわっている。

韓国の有名映画俳優ソル・ギョングとアイドル出身で今では俳優として活躍するイム・シワンの二人が主演をつとめる『名もなき野良犬の輪舞』!

日本でも20185月から公開され、韓国映画ファンを中心に話題を集めています。

一見、刑務所で出会った二人の男性の犯罪者を描いてるため、インファナル・アフェアのような犯罪映画、いわゆるノワール物に見えますが、実は本当のテーマは違うのではという噂があります。

映画『名もなき野良犬の輪舞』の本当のテーマとは一体何なのかを解説します。

 

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目次

◆ソル・ギョング、イム・シワン主演の『名もなき野良犬の輪舞』

『名もなき野良犬の輪舞』はソル・ギョングとイム・シワン主演で刑務所で出会った二人の犯罪者の姿を描いた作品です。

2017年、カンヌ映画祭の深夜上映部門で上映した時は、約9分間のスタンディングオベーションで絶賛され、その作品性の高さを認められました。

またチェ・ミンシク、ソン・ガンホらと一緒に韓国映画界で絶大的な信頼を受けているソル・ギョングと、アイドル出身で俳優になりもっとも成功したと言われる若手イム・シワンの二人が主演するということも、映画ファンの期待を集めたんです。

 

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◆韓国では観客動員に失敗した『名もなき野良犬の輪舞』

こうやって映画公開前はすっごく高い注目を集めた『名もなき野良犬の輪舞』

しかし、いざ韓国で公開されると、そこまで人気が出ることはなく、観客動員数91万人で映画館での上映が終わってしまいました。

観客動員数91万人というのは、映画製作費を考えると大赤字になってしまうという数字。

映画制作会社、配給会社ともにかなりを打撃を受けました。

なぜここまで観客動員に‘失敗’したかについては色々な原因があげられていますが、やはりストーリー展開上、暴力的なシーンが多く、 R-18指定になったというのが一つあります。

(R-18指定になると、女性を中心にしたファミリー層の観客が見込めないので、大ヒットは難しいとされます)

また公開翌週に『パイレーツ・オブ・カリビアン』が公開されてしまって、そちらに注目が集まったことも一つあると思います。

韓国の映画界は公開される作品数が多く、競争が激しいため、作品の前売り率(予約率)が悪くなると、映画館がすぐに上映回数を減らしてしまいます。

上映回数が減ると良い時間帯(平日の夜や週末午後~夕方など)での上映ができなくなるので、自然と観客数が減ってしまうんです。

ただ観客動員には失敗してしまった『名もなき野良犬の輪舞』ですが、マニア層からかなり大きな人気を集めました。

彼らの作品への愛情はすごいもので、すぐに映画館上映が終わってしまったことを惜しんで、みんなでお金を集めて映画館を借りて上映会を開くほどでした。

※ここから先は作品の核心に触れる可能性があります

 

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◆『名もなき野良犬の輪舞』の本当のテーマとは

『名もなき野良犬の輪舞』は刑務所で出会った二人の男性が中心になる物語です。

ソル・ギョング演じるジェホは、刑務所の中にいるものの、その頭の良さを大胆さで刑務所を完全に支配している大物。

イム・シワン演じるヒョンスは刑務所に入ったばかりの若者だけど、ある事件をきっかけにジェホからの信頼を得るようになります。

二人の友情は出所後にも続き、ある犯罪組織を乗っとる計画まで立てて、行動を開始します。

…ってここまで聞くと完全な犯罪物・ノワール物の作品です。

ネタバレになりますので詳しいことはお話できませんが、映画を見ているとおや?!と思う部分があります。

ジェホとヒョンスの間に流れる妙な雰囲気が、友情や義理では説明できない

「え?まさか二人付き合ってる?」って思うシーンがいくつが出ているんです。

普通の犯罪物だと思って映画を見た観客からすると、違和感を覚える部分があります。

実際、『名もなき野良犬の輪舞』は映画公開後に‘これは犯罪物じゃなくてラブロマンス’だと評価されはじめましたし、監督や主演俳優らもそれに近い発言をたくさんしています。

 

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『名もなき野良犬の輪舞』は実は同性愛のラブロマンス映画という根拠

<理由①監督の発言>

『名もなき野良犬の輪舞』がロマンス映画だと思われる理由は、まず監督の発言にあります。

映画監督のビョン・ソンヒョンは、ソル・ギョングをスカウトする際、このような発言をしたと知られています。

「こういったジャンルで、男性二人が主演というのは(全世界で)1年に100作品は作られる。この作品が他の作品との違いは、’スタイル’にある。」

「ソル・ギョングとイム・シワンのメロ(*ロマンス)作品に近い内容。今回の映画を撮る前にノワールよりメロ(*ロマンス)映画をたくさん見ている」

こうやって一見、二人の男の野望を演じた犯罪物に見える作品だけど、ラブロマンスのスタイルであると監督自ら話しているんです。

他にも監督はツイッターで、『名もなき野良犬の輪舞』をラブロマンス映画として解釈したファンに対して「しっかり映画を見てくれている」との反応を見せたこともあります。

 

<理由②ソル・ギョングの発言>

監督の発言の他に、主演をつとめたソル・ギョングも映画公開後の記者会見でこのような発言をしています。

「これはメロ(*ラブロマンス)作品」

「私はこの映画を撮りながらイム・シワンという俳優を愛し、嫉妬も感じた」

ってもうここまで言われると、『名もなき野良犬の輪舞』はラブロマンス映画だと言っても良さそうですね(笑)

ちなみにソル・ギョングの発言を聞いたイム・シワンは「毎回、映画の紹介の時にソル・ギョング先輩と監督がラブロマンス物だって言ってびっくりする」と若干引き気味だったみたいで。

ちょっとビビっちゃってるイム・シワンの姿がめちゃくちゃかわいかったみたいです(笑)

 

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◆『名もなき野良犬の輪舞』はなぜラブロマンス映画だと言えなかったのか

それでは最後に監督と主演俳優がここまで発言しているのになぜ『名もなき野良犬の輪舞』はラブロマンス映画として売り出せなかったのかについて考えてみたいと思います。

前で説明したように韓国映画界はものすごく競争が激しい世界です。

韓国では全国一斉公開が普通なんですが、公開最初の週に一気に注目を集めておかないと、映画予約率が下がり、すぐに上映が終わってしまいます。

だから公開前に分かりやすくたくさんPRをして、映画公開してからすぐに段階でたくさんの観客に見てもらわないといけません。

こういった状況で、保守的な韓国では抵抗があるはずの‘男性同士のロマンス物’を打ち出すと観客が集まらない可能性が高くなりますよね。

実際、『名もなき野良犬の輪舞』も制作会社側がラブロマンス映画だとPRすることに反対して、仕方なく犯罪物・ノワール物だとPRしたという噂もあります。

まあ、多額の投資をした会社側としては、大物俳優が出演する映画をなんとしてでも成功させたいと思うのは当たり前ですしね。

『名もなき野良犬の輪舞』はストレートに同性愛を描く部分もほとんどないですし、映画がとりあえず成功してから本質を伝えても良いと思ったんだと思います。

 

こうやって紆余曲折(?)あった『名もなき野良犬の輪舞』は、日本でも20185月から上映が始まってますので、ご興味のある方はぜひ映画館に足を運んでみてください。

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