映画パラサイトを見た方に「あのシーン」の意味を解説します

この記事の著者

韓国出身のKPOP・韓国芸能専門フリーライター。慶応義塾大学卒業。

日本にて韓国ドラマや映画の翻訳及び輸入事業をサポート。広告代理店勤務を経て、2012年から韓国Mnetにて、M COUNTDONWやMAMAなどのPRやマーケティングに関わる。

現在は同社退職後、フリーライターとして、幅広い形で日韓文化交流にかかわっている。

今、世界の映画界で旋風を巻き起こしている『パラサイト 半地下の家族』。

半地下で貧しい暮らしを送る4人家族が、ひょんなことをきっかけに高台の大豪邸に入ることから始まる不思議な出来事を描いています。

韓国文化ならではの表現やメタファーも多く、外国人からすると理解しにく部分も多かったと思います。

ポン・ジュノ監督もインタビューで

「韓国的なディテールやニュアンスが多く含まれた映画なので、外国人は理解しづらいかと思っていました。」
引用:『Forbes JAPAN』、2020.01

と語っていたほど。

KBANでは『パラサイト 半地下の家族』で描かれている韓国ならではの表現やメタファーについて解説したいと思います。

※ここからは映画のストーリーに関するネタバレが含まれています。

※あくまで個人の主観による解説であり、監督の意向を100%反映しているものではありません。

 

解説1.ギウが友達からもらったデカい岩の意味

ギウがお金持ちの友だちミンヒョクからもらってきたデカい岩。

それは水石というものです。

水石は日本にもある文化で室内で意思を鑑賞するもの。

特にミンヒョクがくれた水石は、持っていると財運が高まるという”山水景石”。

長男のギウはこの岩に何度も「象徴的だ」というセリフを口にするように、岩は富を象徴しているように見えます。

実際、この”山水景石”がギウの家に来てから、ギウ家の財運は上がっていきますし、後半に起こる”ある出来事”のあとで家族の立場は危ういものになります。

その直後に長男ギウはこの石に異常な執着を示すようになります。

そしてその石を手放してしまったことで物語はクライマックスを迎えます。

 

解説2.大豪邸の子供がインディアンの格好をしている理由

ギウが大豪邸に足を踏み入れた時、子供のダソンはインディアンの格好をして矢を放します。

これはアメリカ本土に侵入する者(ギウ)と、侵入者を攻撃するインディアン(ダソン)に見立てています。

このシーン以外にもダソンは映画の中で

・家族のにおいが同じであることを指摘

・地下室から出されるモールス信号を解読

と家族が侵入者であることを警告する役割を果たします。

ちなみにこのおもちゃはアメリカ産であることが描かれており、ポン・ジュノ監督のディテールが光る部分です。

 

解説3.家政婦の夫(グンセ)の地下室にあった本と張り紙の意味

作品の中盤以降、その存在が明らかになる家政婦の夫であるグンセ。

グンセが忍び込む地下室のインテリアにも様々なディテールが含まれています。

まず地下室にあった本はほとんど法律に関するもの。

グンセが人生を逆転させるために司法試験に挑んできたのでは、と推測することが出来ます。

実はこれらの法律の本はものすごく古くい書籍なんです。

本に対して家政婦を演じたイ・ジョンウンさんはこのように語っています。

イ・ジョンウンさんが考えるには、グンセは、現在ありもしない法律を勉強する世間知らずの夫である。ビジネスも上手く行かないものばかりやって、自分が家政婦の仕事をしながらバックアップしなきゃいけない状況だという。
引用:ノーカットニュース、2019.06

それから壁に貼ってあって張り紙はすべて大きな成功を収めた人達に関する内容。

グンセは、そうやって成功した人たちを神格化して、自らその人たちのために奉仕しなければならないと考えています。

これは資本主義社会で、金銭的に成功した人たちが神格化されたことによる副作用の表現だとも解説出来ます。

 

解説4.ギテクファミリーの名前と映画タイトル(原題)の関係性

ご存じの方も多いと思いますが、『パラサイト 半地下の家族』の原題は『寄生虫』。

大豪邸に忍び込む寄生虫という、とても赤裸々なタイトルです。

この『寄生虫』を韓国語で読むと

ギ・セン・チュン。

お気づきですか?

ギテク4人家族の名前には、

キム・テク(夫)

パク・チュンスク(妻)

キム・ウ(兄)

キム・ジョン(妹)

ギ・セン・チュンのギとチュンが入っています。

 

最後に少し良い話.『パラサイト』を初めて見た一般人は誰?

製作スタッフや関係者の覗いて、『パラサイト 半地下の家族』を初めて観覧したのはグンセ役を演じたパク・ミョンフンさんのお父さんだと知られています。

グンセ役はそれ自体が大きなネタバレになるため、映画に出演していても知られてはいけない存在

そのためパク・ミョンフンさんはキャスティング段階から秘密保持契約書を書き、映画公開以降もPRイベントや映画祭など晴れ舞台に立つことが出来ませんでした。

映画が韓国で大成功を収めて、やっとインタビューも出来るようになったパク・ミョンフンさんはポン・ジュノ監督に関してこんなエピソードを語りました。

映画の完成間近で、まだまだ少人数の関係者にだけの試写会が行われていた頃。

ポン・ジュノ監督はパク・ミョンフンさんに関係者試写会にお父さんを招待するように提案したそうです。

実は映画撮影の時、パク・ミョンフンさんはお父さんが肺がんだということが分かって、そのことをスタッフに漏らしたことがあるということ。

それを聞いたポン・ジュノ監督は、パク・ミョンフンさんとお父さんを元気づけようと試写会に招待したんです。

まだ俳優たちも映画を見れていない段階での試写会で関係者ではない人を招待するのは極めて異例なこと。

ポン・ジュノ監督の俳優への配慮がどれだけ繊細なものなのかが分かるエピソードでした。

 

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まとめ

ここまで映画『パラサイト 半地下の家族』で描かれているの表現やメタファーについて解説しました。

みなさんすでに映画をご覧になっていると思いますが、表現やメタファーを念頭において改めて見てみるとまた違う発見があるのではないでしょうか♪

画像:CJ ENM

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